入潮 佳子

臨床研究コーディネーター

治験に携わる中で見つけた
研究者としての新たなやりがい

PROFILE

入潮 佳子さん

市立池田病院 臨床研究管理部 臨床研究管理室長
資格・認定:薬剤師、臨床薬理学会認定CRC、日本臨床試験学会認定がん臨床研究専門職

被験者に寄り添い、チームの力で治験をサポート

新薬が世の中に流通するまでには、安全性や有効性を確認するための治験が必要となります。CRC(臨床研究コーディネーター)は、法律に基づいて作成されたプロトコール(治験実施計画書)に沿って治験が適切に行われるよう、製薬会社や医師、関係部門との調整業務を担います。また、治験データを的確に収集することはもちろん、被験者のケアも私たちの重要な仕事です。治験に対して不安を感じる方も多いため、常に丁寧な説明とサポートを心がけています。もうひとつ、大切にしているのは部門内で協力しあうこと。CRCには看護師や検査技師など様々な専門性をもつ人がおり、それぞれに可能な業務の範囲も視点も異なります。例えば、薬剤師は薬に関する知識や化学的な視点を、看護師は被験者への寄り添う力を活かし、足りない部分を補い合うことで、より良い治験を行えると考えています。

臨床研究全般のプロとして未来の医療をつくっていく

私は現在、医師から研究テーマを与えてもらったことがきっかけで、治験以外の幅広い臨床研究にも携わっています。治療成績をまとめたり、データの収集や解析をする中で、ますますプロトコールへの興味が高まり、論文の執筆や学会での発表も行うようになりました。薬剤師からCRCになり、長く続けられているのは、臨床研究という新たなやりがいを見つけられたからだと感じています。患者さんと直接向き合い、新薬が発売されるまでの経緯に立ち会えることもCRCの醍醐味ですが、同時に臨床研究全般のプロフェッショナルを目指すこともできます。今後も目の前の治験に真摯に向き合うとともに、未来の医療をつくるサポートができればと思っています。

牧 孝子

学校薬剤師

救えなかった悔しさを糧に、
地域の健康に貢献していく

PROFILE

牧 孝子さん

マキ薬局 代表
資格・認定・所属学会等:薬剤師、尼崎市薬剤師会 会長、
スポーツファーマシスト、ママサポート薬剤師指導薬

環境衛生を整え、学校を安心して過ごせる場へ

子どもたちが安心して学校生活を送れるよう環境を整えるのが学校薬剤師の役割です。教室や給食室、プールなどの衛生管理をはじめ、保健室や理科室に置いてある薬の点検、廃棄方法の指導なども行います。最近では教室の温度や湿度、炭酸ガス濃度の計測、手洗い・消毒の指導など新型コロナウイルス感染症対策にも取り組んでいます。また、学校からの依頼で飲酒や喫煙、薬物乱用防止に関する講演をさせていただくことも。先日は小学3年生向けに薬物乱用防止教育を行いました。小学生に伝わるか心配していましたが、最後に記入してもらったアンケートを見ると驚くほど深く理解してくれていました。おうちでご家族と一緒に話し合ってくれた子もいたようです。後日、親子で薬局を訪れ「薬物は絶対にやりません」と話してくれた子もいて嬉しかったですね。

健康をトータルサポートできる薬剤師を目指す

私が今注力しているのは、薬学の知識だけではなく、漢方や栄養学、食事や睡眠、運動の知識を活かし、地域の方々の健康をトータルサポートすること。その原動力となっているのは、私が高校2年生の時に亡くなった兄の存在です。当時大学2年生だった兄は劇症肝炎という病気を発症し、わずか3日で亡くなってしまいました。兄を助けてあげられなかった悔しさから、地域の方々の健康や病気予防に貢献したいと強く思うようになりました。薬剤師は薬に関する業務に特化した職業と思われがちですが、環境衛生や特定の疾患の専門家にも、地域に根ざして人々の健康をサポートする立場にもなれます。仕事内容も活躍の場も幅広く、多種多様な可能性とやりがいがある職業なので、ぜひ興味のある分野を追究してほしいと思います。

大塚 早苗

訪問薬剤師

家族のように真心を込めて
患者さんの人生に寄り添う

PROFILE

大塚 早苗さん

サポート薬局 代表
資格・認定等:薬剤師、認定実務実習指導薬剤師

患者さんの生活を観察することでありのままを把握できる

私が訪問薬剤師をはじめたのは、訪問診療を行う診療所の医師が偶然薬局の前を通りがかり、声をかけていただいたことがきっかけです。医師が患者さんの状態を診て処方箋を送り、後から私が薬を持って訪問するかたちで連携し、現在は10軒の患者さん宅を訪問しています。ご自宅を訪問することで、薬局で接するだけではわからない患者さんの本音や症状、生活状況が明らかになります。医師は「診る」、看護師は「看る」と書きますが、薬剤師は「視る」ことが求められます。認知症の方が食事や薬をとれているか、アルコール依存症の方が飲酒を控えているか、常に化学者の視点で観察することを意識しています。また、医師には悪く思われたくなくて言いづらいことも薬剤師になら打ち明けやすいという方も多く、医師と患者さんの橋渡しを行うのも重要な役割です。

最期まで住み慣れた自宅で過ごすその手助けをしていきたい

私が担当する患者さんは高齢者を中心に難病の方、末期癌の方、認知症の方など様々。これまでで特に印象に残っているのは、ある認知症のおばあちゃんの言葉です。その方は一人暮らしで、食事もとらず寝たきりで過ごすことも多かったのですが、最期まで住み慣れたご自宅で過ごされました。最後に訪問した時、ご本人も先が長くないと悟っておられたのか「いつも良くしてくれてありがとう。いつ死んでも悔いはないよ」と言ってくれました。在宅訪問のやりがいを感じ、今も励みになっています。一軒ずつ個人宅を訪問するのは時間も手間もかかりますが、その分、患者さんの人生に深く関わることができます。最期まで地域の方々がご自宅で安心して過ごせるよう、今後も家族のように真心を込めてお手伝いしていけたらと思っています。