“トイレ”を考える人

A person thinking about the structure of ancient toilets.

文学部歴史文化学科

北松 将輝

4回生/古代史学・日本考古学 竹本晃ゼミ

こんなに古代トイレのことを
知っているのは日本中に自分しかいない!

奈良時代から平安時代までのトイレ遺構の形態的変遷について卒論にまとめました。当時のトイレには、細長い形状と丸い形状の2つが発掘されていますが、用を足すための場所だったのか、排泄物を溜めておいたものなのか、それぞれの用途は明らかになっていません。では、なぜ形状が2つに分かれているのか。それを知りたくて、研究をはじめました。一冊だけ約20年前に書かれたトイレ遺構に関する書籍がありますが、その著者以外に日本のトイレ遺構を専門的に研究している人はいません。古代のトイレ遺構は、藤原京、平城京、長岡京、平安京と秋田県の秋田城跡、福岡県の鴻臚館跡にしか見つかっておらず、各地の様々な団体が発掘調査を行っているので、その報告書をひとつひとつ探し出すのは本当に大変でしたね。学内やインターネットで情報を集め、国立国会図書館にも足を運びました。国立国会図書館にもない資料は、市や研究所の図書館でも探しました。国内のトイレ遺構に関する資料をすべて集めきった時には「こんなにトイレのことを考えているのは日本中で自分だけだ!」と達成感を感じましたね。





二人三脚で指導してくれた先生から
研究に取り組む姿勢を学んだ。

様々な資料を読み込み、僕が考えたのはトイレの形状は用途によって分かれるのではなく、時代によって変化していったのではないかということ。現在でいうトイレットペーパーの役割をした籌木(ちゅうぎ)という木片が、排泄物の層のどこから出土したかによって、トイレの用途がわかるのではないかと結論づけました。僕がここまで研究に熱中できたのは竹本晃准教授の存在があったからこそ。もともとトイレ遺構に興味をもったのも先生の授業がきっかけです。生活に身近なトイレの遺構についてもっと知りたいと考えたことから、二人三脚で歩んでくれる先生のゼミへ。はじめはトイレ遺構というキーワードからスタートし、何をどのように研究していくか先生に相談しながら卒論を書き上げていきました。先生はゼミ生を指導するために各自の卒論のテーマについて自身も勉強されています。ストイックに研究に取り組む先生の姿を見ていると、僕が手を抜くことなんてできません。卒論を通して、文章表現や情報収集能力はもちろん、研究への向き合い方を学ぶことができたと感じています。