物語の常識を裏返す

Invert the common sense of a story.

文学部日本語日本文学科

東 典幸 教授

専攻分野:日本文学(近・現代)

メロスは友情と正義にあふれた好青年?
それとも周囲を振り回す身勝手な男?

文学部というと、「高校の現代国語の延長」や「名作を読む」というイメージが強いかもしれませんが、流行の歌やマンガ、ライトノベル、占いなども学びの対象となります。1年生の「文学入門」では、多様な文学を知り、体験してもらいたいと考えています。例えば、太宰治の『走れメロス』。友情物語として有名なこの小説も、「書いてある通りに読む」と違う側面が見えてきます。メロスは結婚式で妹に「旦那さんに隠し事をしてはいけない」と話しますが、彼自身は処刑を宣告されていることを妹に隠している。それに、妹の夫に「飼っている羊を全部あげる」と言っているのに、その後、友との約束を果たすために走り、疲れきったメロスは「このまま羊でも飼って暮らそう」と言うのです。「羊はあげたんじゃなかったの?」と疑問に思いませんか?そんな風に読んでいくと、メロスはただの友情に熱い人物ではなく、むしろ「彼を信じて待ち続けた親友のセリヌンティウスの方がいい奴じゃないか」と別の見方が生まれるのです。





作者の意図を超える言葉の面白さを体験し、
「脳内リア充」になりましょう!

読書をするとき、多くの人が無意識に作品から何かしらの教訓を読み取ろうとしていると思います。でも、文学の本当の面白さは、言葉になった瞬間から作者の意図を超えてしまうことにあります。私の授業では、そんな文学の面白さを体験してもらいたいと考えています。書いてある通りに言葉を読むにはトレーニングが必要ですが、それができるようになると、一般論に流されることなく、目の前でいま何が起きているのかを見極めることができるようになります。以前、ある卒業生が「私、脳内リア充」と言っていました。いい言葉ですよね。文学をたくさん吸収して、自分で考え、自分で理解を深める。そして、脳内で世界観を築いていく。皆さんにもぜひ本学で「脳内リア充」になってもらいたいですね。