「原典・現物」にふれると見えなかったことが見えてくる

歴史的な書物や絵画、造形物。
現代を生きる私たちがそれらを読み解く際、
手がかりとなるのが、現物であり原典です。
当時の史料や遺物には、人々の暮らしや
価値観がありのまま表れます。
教科書やネットを見れば答えは簡単に出てくる
かもしれないけれど、自分で疑問を見つけ、
答えを導き出す方がずっと面白い!
そんな現物・原典にふれる文学部の
ユニークな授業をご紹介します。

Theme 01

埴輪のカケラを手に時空を超える旅へ

埴輪のカケラを
手に時空を超える旅へ

歴史文化学科

犬木 努 教授

専攻分野:考古学
東京大学文学部卒業、東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。東京国立博物館研究員。博士(文学)。

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犬木教授が毎年ゼミ生を中心とする有志とともに行っているのが、10日間程度の発掘調査。宮崎県の西都原古墳群へ足を運び、1500年前の埴輪のカケラを発掘します。


大和政権によって全国が統一されつつあった古墳時代、死者を中に封じ込め、魂を他界へ送り出すために作られたのが古墳でした。その数は全国で15万基以上。古墳の上や周囲に並ぶ円筒埴輪は、それぞれの土地で手作業によって作られました。そのため、出土した埴輪のカケラには当時の人々の手相や指紋が残っていることも。高い技術をもつ職人が作ったものから、見習いが見よう見まねで作ったものまで形状は様々。


小さなカケラから埴輪を作る工房がどのように作業を行っていたのか、技術がどのように伝承されていったのかが見えてきます。一期一会の発掘調査を行うことで、教科書を読むだけではわからない当時の生活や文化、価値観までもがリアルに感じられるのです。

Theme 02

地獄の世界の謎を解く

地獄の世界の
謎を解く

歴史文化学科

梯 信暁 教授

専攻分野:仏教学、仏教史学
早稲田大学第一文学部卒業、早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。

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取っ組み合いの喧嘩をする罪人と、罪人の身体を切り刻む鬼。鎌倉時代の国宝絵巻で、「六道絵」と呼ばれる15枚の作品のひとつには、恐ろしい地獄の風景が描かれています。


ところが、よく見ると罪人と鬼のかたわらに小さな赤ん坊が描かれていることに気づきます。なぜ何の罪もない赤ん坊の姿が地獄にあるのか。梯教授のゼミではそんな疑問を絵画、図録、原典から解き明かしていきます。この「六道絵」は、平安時代の『往生要集』という書物をもとにして描かれた作品。漢文で書かれた『往生要集』を訳し、読み解くと絵画の中の赤ん坊は罪人たちが生き返ることの象徴として描かれたことがわかります。


原典の記述と絵画の表現を付き合わせていくと、符合する部分と食い違う部分が出てきます。その理由を追求し、自分なりの解釈を発見できたとき、きっと歴史学がもっと面白く感じられるはずです。

Theme 03

近くて遠い隣人の姿を知る

近くて遠い
隣人の姿を知る

日本語日本文学科

鈴木 利一 教授

専攻分野:日本文学(上代)
天理大学文学部卒業、龍谷大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。修士(文学)。

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企画編集コースの学生は「フィールドワーク」が必修。いくつかの開講科目の内、最も長い歴史をもつのが、この韓国への現地踏査です。日本と似ているようで異なる、知っているようで知らない韓国の過去と現在を一週間かけて現地取材します。


韓国へは、大阪南港国際フェリターミナルから古代と同じ瀬戸内海経由の航路を使い、船で向かいます。現地到着後は慶州やソウルを巡り、日韓の歴史と文化の比較考察に取り組みます。例えば、日本で木造の仏塔や金銅製の大仏が作られていた8世紀、韓国では石造りの仏塔や大仏が作られていました。慶州の寺院を訪れ、実際にその違いを見ることで座学では得られない気づきを得ることができます。


また、現地の人々とのふれあいを通して、メディアで報じられる日韓関係だけが真実ではないということにも気づくでしょう。答えが出なくてもまずは疑問をもつことが大切。日本と韓国はどこが似ていて、どこが異なるのか。なぜ似ていて、なぜ異なるのか。メディアが何を伝え、何を伝えていないか。リアルな韓国を自分の目で見て考えることで、新たな視点を手に入れます。

Theme 04

漢文はエンターテイメント作品の宝庫

漢文はエンターテイメント
作品の宝庫

日本語日本文学科

稲垣 裕史 准教授

専攻分野:中国文学
富山大学人文学部卒業、京都大学大学院文学研究科修了、博士(文学)。

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稲垣准教授が担当する「中国文学講読」では、授業時間が終わった後も学生たちがワイワイと議論する姿が見られます。彼らが話しているのは、中国の古典の登場人物について。物語のひとつのシーンから、その人物がどんなキャラクターなのかを想像し、意見を交わしているのです。


授業では、高校卒業までに身につけた漢字の知識と漢和辞典『新字源』を駆使して、漢詩・漢文を読み解いてゆきます。長い歴史をもつ中国古典には、現代のマンガや小説と同じように、アクション、ロマンス、ホラー、SF等々、何でもそろっています。最初は、好きな現代作家の小説は読むけれど、古文・漢文は苦手、という人ばかりですが、簡単なルールを押さえた後は、誰もが辞書を片手に読めるようになります。古典が読めれば、読書の幅も、楽しみ方も、無限に広がります。漢文を読み解くうえで重要なのは、漢字のニュアンスを押さえ、自分なりの翻訳ができるようになること。


例えば、「おもう」という言葉に対応する漢字は「思う」「想う」「意う」「念う」等々たくさんあり、それぞれにニュアンスが異なります。ニュアンスを汲み取った上で、どう訳していくかは、読み手の自由。漢文を読むことは、日本語の表現力を磨くことにもつながっていくのです。