大学創立50周年 学長式辞

大阪大谷大学 学長
尾山 眞之助

本日ここに、大阪大谷大学創立50周年記念式典を多くのご来賓や本学関係者の皆様のご臨席を賜り挙行できますことは、この上ない喜びでございます。皆様には、ご多用中にも関わりませずご臨席賜り、誠にありがとうございます。また、皆様には、大阪大谷大学の50年の歴史の中で、本学の発展のために多大のご貢献をいただき、厚いご支援を賜ってまいりました。本学が50周年の節目を迎えることができましたのは、50年のそれぞれの時期における皆様や先人の方々のご尽力の積み重ねによるものでございます。この場をお借りし、衷心より感謝と敬意を表する次第でございます。

昭和41年4月、本学の前身となる大谷女子大学が開学いたしました。大谷女子大学は、「教育基本法に基づき、学校教育法の定める大学として学術を研究教授し、広く文化の進展に寄与するとともに大乗仏教の信念に基づき家庭ならびに社会生活の合理化に役立つ有能善良な指導的女性を育成することを目的」とし、文学部国文学科及び英文学科の1学部2学科、入学定員100名の大学として、富田林市錦織の地にその第一歩を印しました。大谷学園校祖左藤了秀は、日露戦争後の人心の荒廃に心を痛め、学校教育を通して宗教的情操を養おうと大谷学園を起こしましたが、この女子大学の創立は、校祖の悲願であったことが伝えられています。「いかに苦しい時代であっても次の世代を担う人を立派に育てていかなければならない。これからは男女同権の時代にならなければならず、女子教育を担当する大谷学園に課せられた使命はますます大きくなる。終戦後女子のための大学を創めなければならない」、校祖は、戦時中、病床にあってそのような想いを述べたとされています。その想いは、大谷学園関係者に引き継がれ、女子大学誘致への富田林市関係者の強いご支援と、資金面では学債を募集し、学園在籍の生徒の保護者や卒業生の方々によるご協力を得て、大谷女子大学が誕生することになります。昭和40年における4年制大学への女子の進学率が5%弱で、男子の進学率とは5倍近い開きがあったこと、折しもいわゆる団塊世代の大学進学時期にあたり、昭和41年の18歳人口が249万人で前年より55万人も増加していたことにかんがみれば、大谷女子大学の創立は、女性に高等教育を受ける機会を拡げるという社会的要請に応え、歴史的な使命を担うものでありました。

大谷女子大学は、その後も、その時々の社会的要請に応え、発展してまいります。

昭和45年には幼児教育学科が新設されました。当時、幼稚園教員の不足が目立った時期であり、また、4年制大学においての幼稚園教員養成は全国でも少数で、各方面から期待されての開設でありました。そして、幼児教育学科は、昭和46年には教員養成課程(小学校一級)の認定も受け、当時不足気味であった小学校教員の養成にも乗り出すことになります。1学部3学科となった大谷女子大学は、昭和50年には入学定員が480名となり、開学時の5倍近くとなりましたが、その年、大学院文学研究科(国語学国文学専攻、英語学英米文学専攻)の修士課程設置が認可され、昭和53年には、博士課程の設置も認可されることになりました。

さらに、平成12年、「国文学科」を「日本語日本文学科」、英文学科を「英語英米文学科」、幼児教育学科を「教育福祉学科」として名称と教育課程の変更を行うとともに、新たに、「文化財学科」と「コミュニティ関係学科」を新設しました。これらの新設学科の基本理念は、「生涯学習社会」に適応する人材を、地域社会の歴史や文化により深くコミットするといういわば縦の方向性と地域社会の人間関係の広がりやつながりに広くコミットしていくといういわば横の方向性の2つの方向性によってその能力開発を図るという新しい考え方に立つものでした。「文化財学科」は縦の方向性、「コミュニティ関係学科」は横の方向性によって、それぞれ地域社会の発展にコミットしていくことになります。この時の文学部の学科の改組が、その後、平成16年の教育福祉学部の創設、平成17年の人間社会学部の創設へとつながり、今日の大阪大谷大学の基盤となっています。

そして、平成18年、大学は大きな転換期を迎えることになります。薬学部のない近畿南部における薬剤師の養成を担って薬学部を開設し、それを機に男女共学とし、大学名を大谷女子大学から大阪大谷大学に改めました。大学の設置目的を「教育基本法に基づき、学校教育法の定める大学として学術を研究教授するとともに大乗仏教の精神を尊び、学識、情操、品性に優れた人材を育成し、持って社会の発展と文化の向上に寄与することを目的とする」とし、新たに教育理念として「自立」「創造」「共生」を定め、時代の要請に応えるべく多様な教育を展開していくことになります。こうした変遷を経て、本学は現在、文学部、教育学部、人間社会学部及び薬学部の4学部6学科、入学定員650名と大学院を有する総合大学となっています。

このように大阪大谷大学の50年の歴史を振り返るとき、本学がこの間大切にしてきたものが、大きく2つ浮かび上がってまいります。

一つは、学則に示す教育の目的に「大乗仏教の信念」「大乗仏教の精神」とあるように、「報恩感謝」を建学の精神とする大谷学園が設置する大学として、宗教的情操の育成を中心とした人間教育を重視してきたことです。大谷女子大学は、女性の教養や情操を培い、品性を磨く大学として知られてきましたが、その伝統は男女共学となった今日になっても引き継がれ、「大谷ブランド」として、本学の魅力の1つを形成しています。

もう一つは、常に時代の要請に応えてきたことです。女性に高等教育の機会を拡げる、不足する教員や薬剤師の養成を担う、生涯学習社会に適応し、地域社会の発展を担う人材を育成するなど、本学は、その時々の社会の要請に応え、学部・学科などの教育組織や教育課程の見直しを行い、社会の現場における実習等を重視して高い実践力を有する人材を育成してきました。

こうした大学創立当時から続く人間教育と伝統を守りながら時代の要請に応え変革を続けてきた本学は、これからもその姿勢を堅持し、新たな大学の歴史を創造してまいりたいと考えています。創立50周年のシンボルマーク「その想い、未来へ」にはそのような気持ちが込められています。

創立50周年を節目として、本年、本学の未来に向けて2つの計画を策定いたしました。

一つは、「OSAKA OHTANI VISION 2025」です。

この「OSAKA OHTANI VISION 2025」におきましては、10年後の2025年(平成37年)の大学像、いわば目標とする大学の将来像を五つの柱でまとめております。具体的には、①「報恩感謝」の心で、自らを高め、人や社会に貢献する能力や態度を育む大学になる。②未来に必要となる資質・能力をしっかり身につけさせる教育力のある大学になる。③学生の悩みに適切に対応し、学生に多様な交流や安心して勉学に励む環境を提供する大学になる。④活発な知の創造提供をとおして社会の発展に大きく貢献する大学になる。⑤生涯学習の拠点として、地域に生き、愛される大学になる。以上の五つの目標を掲げております。そして、この目標を実現するための基本方針を、「教育」「学生支援」「研究」「社会貢献・地域社会との共生」「大学運営」の分野ごとに定め、この方針をもとに更に具体的な「アクションプラン」を作成して、自己点検・評価を適切に実施しながら大学改革を進めていくことにしています。未来に向けて必要となる資質・能力を学生に確実に身につけさせる教育課程や教育方法の開発と実施、学生の学習成果や大学教育に対する要望をより具体的に把握し授業の改善に反映するための取組、学生の主体的な学びのための環境整備、就職・キャリア相談の一層の充実など、「OSAKA OHTANI VISION 2025」に基づきながら着実に大学の運営の充実を図り、大学の新しい歴史に向けた歩みを進めてまいります。

未来に向けた計画のもう一つは、「大阪大谷大学志学台キャンパス整備基本構想」です。

この基本構想においては、昭和52年以前に建築された八棟の校舎を建て替えるべく、新校舎の建設に平成31年に着工し、平成33年に一部教室を稼働させ、平成34年から35年頃に大学新校舎すべての竣工を目指すことが計画されています。これを受け、本学としても、教育環境の高度化と安全安心で快適なキャンパスを実現するため、鋭意、諸準備を進めてまいります。新しい校舎の建設は、本学の魅力を一層高め、学生の学習意欲を更に盛り立てるものと確信いたしております。

このように大阪大谷大学は、これからソフト面においてもハード面においてもさらなる改革を進めてまいります。10年後の2025年、大阪大谷大学は、さらに充実した教育プログラムを用意して、学生が、幅広い教養、深い専門性、優れた問題解決能力、自主的・主体的・共感的態度、そして高い実践力といった未来を切り開く資質・能力を身につけることができるような大学になっているでしょう。そして、キャンパスのリニューアルを図って、学生が快適に、また安心して勉学に励むことができる環境を整えているでしょう。卒業生は、「報恩感謝」の心をしっかりと身につけ、また、社会の複雑な課題の解決に自らの力を尽くし、他者とも協力して積極的に挑戦し、各方面で活躍していることでしょう。大学における研究や地方自治体、団体との連携強化、生涯学習の機会の提供もますます活発化し、本学は、地域に生き、地域に愛される大学としてますます発展していることと思います。

そうした本学の未来に対する想いを本学に関わるすべての人々が共有し、その力を結集して、その実現に向け邁進してまいりたく存じます。

結びにあたり、ご出席の皆様のこれまでの本学に対するご尽力に改めて感謝申し上げますとともに、今後とも変わらぬお力添えを賜りますようお願い申し上げ、式辞といたします。

平成28年11月26日
大阪大谷大学長 尾山 眞之助