薬剤学講座

講座紹介

当講座のミッションは、<人々のQOLの改善に寄与する研究開発を行うこと> 並びに <実社会において人々のQOL向上に貢献できる人材を育成すること> です。 これを実現するために、モノ作りに関しては、製薬企業で医薬品の製品開発や製剤研究の経験のあるスタッフが研究に従事し、学生に実践的な指導を行っています。また、仕組み作りに関しては、異分野を含めた様々な機関や企業との協同により推進しています。

<楽しめる>は<能力の証し>。学会等での情報発信には学生も積極的に参加し、意欲のある学生は国際学会で発表してくれています。"QOL向上のためには‥"を考え抜き、人々のQOL向上への貢献を楽しみにできる人になっていただく。それが我々の願いです。

スタッフ

教授 村上 正裕 准教授 松本 昭博 助教 髙島 智也

所属学生

  • 6回生:9名
  • 5回生:8名

研究詳細

当講座では、現在、「バイオ医薬品の経口DDS製剤の研究開発」、「未病に対する医薬・医療機器の研究開発」、「オリゴ乳酸の生理活性に注目した創薬研究」、「新規化粧品・健康食品の研究開発」を主なテーマに研究を行っています。将来は、その成果を人々のQOL向上のツールとして臨床に提供したいと考えています。

1.バイオ医薬品の経口DDS製剤の研究開発

核酸医薬品や分子標的薬などのバイオ医薬品は、癌や難病、慢性疾患の治療に威力を発揮する次世代の医薬品として開発が進んでいます。これらのバイオ医薬品は、消化管内の分解酵素の作用やそれ自体の腸管膜での透過性の低さといった理由により、最も患者に負担の少ないとされている経口からの服用が困難とされています。そこで我々は、バイオ医薬品の経口投与を可能とするDDS技術の研究開発に取り組んでいます。
具体的には、核酸分子などの腸管吸収を促進する製剤の新規開発を行っています。この研究を通じて、高脂血症を抑制する遺伝子(核酸)を作用部位である肝臓に効果的にデリバリーする技術の開発や坐剤化に成功しています(図1)。現在は、ナノ微粒子や異形微粒子を利用して、核酸や中分子生理活性物質の腸管膜での更なる吸収改善を実現する新規製剤の開発研究を行っています。

図1

図1

2.未病に対する医薬・医療機器の研究開発

中国最古の医学書「黄帝内経」 によると、「未病」とは「病気に向かう状態」を指し、また、未病の時期を捉えて治すことの出来る人が「医療者として聖人」であると述べられています。高齢化社会の先頭を行く我が国の課題解決策の一つは<健やかな老いの実現>であり、本研究は医療費負担につながる重大な疾病やイベントを未病の段階で予防を可能とする手段を提供することを目指しています。具体的には、生薬やハーブ中の生理作用物質を、医療機関といった特殊環境中はもとより日常の生活環境中にデリバリーする、そのために必要な製剤及び装置の研究開発、とその未病への効果の検証を行っています。現在は血栓症予防を中心に、医学部や病院、企業と連携しています(図2)。

図2

図2

3.オリゴ乳酸の生理活性に注目した創薬研究

オリゴ乳酸の低分子量領域の薬理活性に関する研究を進めています。 その過程で、図3に示すような嫌気的解糖系抑制、抗アレルギー作用や血糖値降下作用など様々な生理作用を示すことを見出している。このような多岐にわたる生理作用の中に、ミトコンドリアの量的増加、形態学的健常性を観察している。近年、ミトコンドリア機能異常は、アルツハイマー病やパーキンソン病といった神経変性疾患、ガン、糖尿病、老化現象などの多くの疾患にかかわることが示唆されています。現在は、ナノ微粒子化技術を用いることにより、オリゴ乳酸の生理活性増強を目指しています。

図3

図3

4.新規化粧品・健康食品の研究開発

化粧品や健康食品は、製剤学を高度に応用されている一般の方にとって身近な製品です。また、人々がそれらの商品を使用することにより、精神的に生活の質を高めていることは無視できない事実です。講座では、技術的に困難な領域に挑戦し、市場価値の高い化粧品や健康食品を研究開発しています。講座間、学部間の垣根を払い、意欲のある学生を広く集めて、あったら買いたいと思わせる化粧品・健康食品のコンセプト作りから処方検討を行います。

主な研究業績

2021年度

  • Murakami M, Otsui K, Ijiri Y, Shimizu M, Ikarugi H, Shioyama W, Yamamoto J, Global thrombosis test for assessing thrombotic status and efficacy of antithrombotic diet and other conditions, Future Sci OA, 2022, 8(3), FSO788.
  • Matsumoto A, Murakami M, Dry fabrication of poly(dl-lactide-co-glycolide) microspheres incorporating a medium molecular drug by a ball mill method」 Drug Discov Ther, 2021, 15(1), 20-27.

2020年度

  • Matsumoto A, Murao S, Watanabe C, Murakami M, Preparation and in vitro tumor growth inhibitory effect of oligo(L-lactate) nanoparticles, Drug Discov Ther. 2020, 14(6), 296-303.
  • Iwasaki M, Murakami M, Ijiri Y, Shimizu M, Yamamoto J, Are all wines made from various grape varieties beneficial in the prevention of myocardial infraction and stroke, Future Sci OA, 2020,6(2), FSO649.

2019年度

  • Matsumoto A, Watanabe C, Murakami M, Janus microspheres for enhanced enteral drug delivery: Preparation and orientated attachment to a Caco-2 monolayer., Drug Discov. Therapeu. 2019; 13(6):343-353.
  • Yamamoto J, Inoue N, Otsui K, Ikarugi H, Shimizu M, Yamamoto S, Murakami M, Ijiri Y, Sakariassen S K, A point-of-care global thrombosis test measuring occlusion time and endogenous lysis time may indicate thrombotic status., FUTURE SCIENCE OA. 2019

2018年度

  • Matsumoto A, Ono A, Murao S, Murakami M, Microparticles for sustained release of water-soluble drug based on a containment, dry coating technology., Drug Discov. Therapeu. 12(6):347-354

2017年度

  • Matsumoto A, Murakami K, Watanabe C, Murakami M, Improved systemic delivery of insulin by condensed drug loading in a dimpled suppository., Drug Discov Ther. 2017;11(6):293-299.

2016年度

  • Murakami M, Watanabe C., Can colorectal delivery technology provide a platform for enteral oligonucleotide-based therapeutics? Drug Discov. Ther., 10(5), 273-275, 2016.
  • Murakami M., Therapeutic oligonucleotides and delivery technologies: Research topics in Japan. Drug Discov. Ther., 10(6), 234-235, 2016.
  • Matsumoto A, Murao S, Watanabe C, Murakami M, Fabrication of Janus particles composed of poly (lactic-co-glycolic) acid and hard fat using a solvent evaporation method. Drug Discov. Ther. 10, 307-313, 2016.

2015年度

  • Murakami M, Nishina K, Watanabe C, Miyata K, Nishiyama N, Kataoka K, Yokota T, Enteral siRNA delivery technique for therapeutic gene silencing in the liver via the lymphatic route., Scientific Reports, 5, 17035-17047, 2015.
  • Murakami M, Matsumoto A, Watanabe C, Kurumado Y, Takama M, Fabrication of porous ethyl cellulose microspheres based on the acetone-glycerin-water ternary system: Controlling porosity via the solvent-removal mode., Drug Discov Therapeu. 2015; 9(4):303-309.

特許

  • 松本昭博、村上正裕 「ヤヌス微粒子及びその製造方法」(特願2020-124921、PCT/JP2021/027260)
  • 村上正裕、松本昭博 「ナノ粒子の製造方法」(特願2019-017631、2019)
  • 村上正裕、松本昭博 「微粒子の製造方法及び微粒子」(特願2017-131036、2017)
  • 横田隆徳、村上正裕 「経大腸吸収用医薬組成物」(特許第5892658号)
  • 八木清仁, 近藤昌夫,渡利彰浩, 村上正裕, 永浜政博, 横田隆徳, 永田哲也, 渡辺知恵,「核酸を含む経腸投与用組成物」 (特願2015-234700, PCT/JP2016/085474, 2015)
  • 村上正裕, 「ヤヌス微粒子及びその製造方法」 (特願2014-237362, PCT/JP2015/ 083082, 2014)

著書

  • 松本昭博(分担執筆), 医薬品におけるDDS技術と製剤開発への応用, 第5章 DDS化に使用される生体材料, 第3節 医薬品DDSへの活用のためマイクロスフィアの利点と課題, pp.287-301, 株式会社情報機構, 2021.
  • 村上正裕、渡辺知恵、DDS先端技術の製剤への応用開発, 第2章 アクティブターゲティングを可能にする表面修飾・コンジュケート技術の応用 ,4節 トコフェロール修飾による直腸からの肝標的デリバリー技術, pp. 102-106,(株)技術情報協会, 2017.
  • 村上正裕,横田隆徳, 非経口投与製剤の開発と応用, 第12章 大腸特異的送達法と直腸・膣投与製剤の開発, 3 siRNAのα-トコフェロール修飾による直腸からの肝標的デリバリー技術, pp. 152-157, シーエムシー出版, 2013.