臨床薬剤学講座

講座紹介

医薬品は、創薬の段階では未知であった効能や有害事象が、市販後に初めて明らかになる場合が少なからずあります。そのため、患者さんの治療の向上を目指して臨床における様々な事象を研究し、薬の適正使用のための有用な情報を収集する必要があります。このように、医薬品が患者さんにより役立つよう育て上げていくことを「育薬」といいますが、このためには、多くの職種が複合的に取り組まねばなりません。本講座は、多くの施設(病院、薬局、企業など)と共同研究を行い、医薬品の安全性(副作用や相互作用等)や有効性に関する様々な問題に対する基礎的研究を行っています。

スタッフ

准教授 小畑 友紀雄 講師 浦嶋 庸子    

所属学生

  • 6回生:9名
  • 5回生:9名
  • 4回生:9名

研究室オリジナルページへのリンク

http://osaka-ohtani-clinpharm.com/blogWP/

研究詳細

テーマ:医薬品の最適使用を目的とした基礎と臨床の複合研究

病院や薬局などの臨床現場においては、患者の薬物治療を行う中で、医薬品の安全性(副作用や相互作用等)、有効性に関する様々な問題の基礎研究的な解明を行っています。

①経腸栄養剤との併用による薬物体内動態変動の機序研究(大阪医科大学付属病院との共同研究)

経腸栄養剤と併用することで、一部の薬物の体内動態変動が起こることが知られています。特に、抗てんかん薬であるフェニトインでは血中濃度低下の報告が多く、てんかん発作を誘発する可能性があります。しかし、この機序は未だ明らかにされていません。
本講座では、ラットに経口投与したフェニトインの血中濃度低下が、経腸栄養剤との同時投与による消化管からの吸収低下が要因であることを明らかにしました。また、フェニトインと経腸栄養剤の投与間隔を2時間あけた場合に、フェニトインの吸収低下を防ぐことが可能であることを見出しました。
現在も、さらに詳細な機序を研究中です。

②院内製剤の安定性試験(八尾市立病院との共同研究)

10%フェノールグリセリン注は、がん疼痛などにおける神経ブロック目的で使用される注射剤ですが、市販薬がないため、院内製剤として製造されます。院内製剤を行う際に備えるべき書類として、使用期限・保管方法に関わるものが提唱されていることから、10%フェノールグリセリン注の安定性を検討しました。その結果、フェノールグリセリン注射剤の主薬であるフェノール含量や、安全な作用のために重要である比重および粘度は、5℃保存において調製後12ヶ月間、25℃保存において6ヶ月間は安定であり、保存後も調製直後と同様の臨床効果が期待できることを見出しました。これにより、日常業務における製剤業務の負担を最小限にし、効率よく運用するための明確な根拠を示しました。

③アスピリン腸溶錠とテルミサルタン製剤の併用による配合変化の検討(製薬企業との共同研究)

アスピリン腸溶錠とテルミサルタン錠先発品との一包化により、錠剤同士の融合や、アスピリン腸溶錠の溶出率変化および含量低下が見られることが報告されていましたが、テルミサルタン錠後発品については不明でありました。本研究では、アスピリン腸溶錠と各社テルミサルタン後発品の接触による外観変化、各錠剤の溶出挙動変化、主成分の含量変化を検討しました。その結果、特定のテルミサルタン錠との接触において、相対湿度75%、30℃条件下にて1週間保管することで、アスピリン腸溶錠の外観や溶出挙動の変化が起こること、および、この相互作用が各薬剤の添加物による酸塩基反応によって引き起こされる可能性を見出しました。本研究結果より、特に夏季の高温多湿条件下においては、アスピリン腸溶錠と特定のテルミサルタン錠との一包化や無放送状態における保存は不適であるとの新たなエビデンスを得ました。

主な研究業績

2019年度

  • 浦嶋庸子、岩本瑞樹、池田賢二、米田勇太、井上麻衣、松本数博、山崎肇、西川満則、廣谷芳彦: 院内製剤フェノールグリセリン注射剤の安定性評価、日本病院薬剤師会雑誌、Vol.55、1191-1194 (2019)
  • Y. Urashima, K. Urashima, M. Ohnishi, K. Matsushita, K. Suzuki, K. Kurachi, M. Nishihara, T. Katsumata, M. Myotoku, K. Ikeda, Y. Hirotani: Interaction between phenytoin and enteral nutrients and its influence on gastrointestinal absorption, Pharmazie, Vol.74, No. 9: 559-562 (2019)
  • 廣谷芳彦、川口莉菜、浦嶋庸子、松本千夏子、森本哲史、恩田光子、池田賢二: 認知症サポーター養成講座実施後の認知症患者に対する薬学生の意識調査、社会薬学、Vol. 38、No. 1: 14-19 (2019).
  • 廣谷芳彦、川須菖、向井淳治、岡本知佳、大竹由起、川口莉菜、浦嶋庸子、池田賢二: 地域住民を対象とした口腔ケアチェックとアンケート調査による口腔内環境の現状と悪化因子の検討、 薬局薬学、Vol. 10、No. 2: 225-236 (2019)

2018年度

  • Y. Urashima, M. Kiso, Y. Hirotani, K. Ikeda: Simultaneous rapid determination of fosphenytoin, phenytoin, and its major metabolite in human serum by high-performance liquid chromatography, Research Journal of Pharmaceutical, Biological and Chemical Sciences, Vol. 9, No. 4: 1709-1715 (2018)
  • 浦嶋庸子、加藤丈晶、赤井美穂、岩本瑞樹、三浦由奈、池田賢二、廣谷芳彦: 無包装状態および一包化時のアスピリン腸溶錠と各社テルミサルタン錠の接触による配合変化に関する検討、Therapeutic Research、Vol. 39: 343-354 (2018)
  • K. Ikeda, Y. Kawasaki, H. Matsuda, S. Kishida, A. Iwasaki, S. Ohata, Y. Urashima, Y. Hirotani: Approach for differentiating trophoblast cell lineage from human induced pluripotent stem cells with retinoic acid in the absence of bone morphogenetic protein 4, Placenta, Vol. 71: 24-30 (2018)
  • 廣谷芳彦、大竹由起、向井淳治、岡本知佳、川須菖、川口莉菜、浦嶋庸子、池田賢二: 後発医薬品数量シェア80%に向けての保険薬局の取り組みと課題に関するアンケート調査、薬局薬学、Vol. 10、No. 2: 225-236 (2018)
  • 廣谷芳彦、岡本知佳、大竹由起、川須菖、川口莉菜、浦嶋庸子、名德倫明、池田賢二: 地域住民を対象とした糖尿病に対する意識調査とHbA1c測定チェックの意義に関する検討、日本未病システム学会雑誌、Vol. 24、No. 1: 10-18 (2018)
  • Y. Hirotani, R. Ueyama, Y. Urashima, R. Kato, K. Ikeda: Prospective effects by co-administration of eicosapentanoic acid, capsaicin, and Dextrin against obesty-related metabolic dysregulation in ob/ob mice, Functional Foods in Health and Disease, Vol. 8, No. 4: 256-266 (2018)

2017年度

  • Y, Fukamachi J, Ueyama R, Urashima Y, Ikeda K. Effects of capsaicin coadministered with eicosapentaenoic acid on obesity-related metabolic dysregulation in high-fat-fed mice. Hirotani  Biol. Pharm. Bull. 40 (9), 1581-1585 (2017)
  • 名徳倫明, 秋山紗奈江, 松浦亜理紗, 面谷幸子, 長井克仁, 初田泰敏, 向井淳治, 廣谷芳彦. 経腸栄養剤に使用する食物繊維および半固形化材へのフェノバルビタールの吸着の影響状況.医療薬学 43(8): 438 -443, 2017.
  • 岩本千晶, 田河みゆき, 面谷幸子, 初田泰敏, 廣谷芳彦, 名徳倫明. 大阪府下病院における病棟薬剤業務実施加算経新設による栄養管理業務への薬剤師関与の変化.日本経腸栄養学会雑誌 32(4): 1340 -1347 2017.

2016年度

  • 廣谷芳彦,中村茉由梨,川村仁美, 浦嶋庸子,名徳倫明. 介護施設入居者の薬剤使用に関する実態調査,薬局薬学,8 (1),121-128,2016.
  • 廣谷芳彦,川村仁美, 向井淳治,浦嶋庸子,名徳倫明. 後発医薬品に関する市民啓発講演後のアンケート調査研究,社会薬学 33(2), 87-93, 2016.
  • 名徳倫明, 公文育実, 小林布美恵, 和田奈津那, 瀬名波宏昌, 岩本千晶, 田河みゆき, 面谷幸子, 長井克仁, 初田泰敏, 廣谷芳彦. 大阪府下病院における経腸栄養剤の使用状況と経腸栄養剤施用患者への薬剤投与実態に関する現状調査,医療薬学 42(5): 364 -372 2016.

2015年度

  • Hirotani Y, Ozaki N, Tsuji N, Urashima Y, Myotoku M. Effects of Eicosapentaenoic Acid on Hepatic Dyslipidemia and Oxidative Stress in High Fat Diet- Induced Steatosis. Int J Food Sci Nutr, 66 (5), 569-573, 2015.
  • 廣谷芳彦,川村仁美,中村茉由梨,浦嶋庸子,名徳倫明. 介護施設入居者の薬剤使用に関する現状と実態,がんと化学療法, 42 (Supplement I), 43-44, 2015.
  • 廣谷芳彦,原口清美,向井淳治,槙本和加子,浦嶋庸子,名徳倫明. 在宅医療研修会に参加した地域薬局薬剤師に対する研修会の効果とその影響,医療薬学,41 (4),266-274,2015.
  • 名徳倫明,浦嶋庸子,廣谷芳彦. 薬学部5年次学生での病院実務実習後の栄養管理教育に関する研究,日本静脈経腸栄養学会雑誌,30(4), 983-986, 2015.
  • 名徳倫明,松山達登,梅谷亮介,中村紗矢香,岡 隆志,北出尚子,浦嶋庸子,廣谷芳彦. リドカインを含有したポラプレジング・アルギン酸ナトリウム含嗽液の製剤学的安定性の評価, がんと化学療法, 42 (2), 207-210, 2015.