私たちの研究室では、核酸分析や培養法を用いて微生物の生態を研究しています。特に多様な環境における微生物の動態に注目しており、そのフィールドは、宇宙、極限環境、都市生態系など多岐にわたります。さらに、マクロ生物を検出するための環境DNA分析技術の開発・応用に取り組み、手法を野外調査に活用することで、動植物の生態を解明する研究も進めています。これらの研究を通じ、生物多様性や生態系の保全、さらには人類の健康の向上に貢献することを目指しています。
宇宙居住空間は、微小重力下でかつ宇宙線に曝露される閉鎖環境であるため、人間と微生物の関係が地上に比べて大きく変化する可能性があります。そこで宇宙居住における微生物リスクを低減し、人間と微生物が共生するための基盤となる知見を得るため、国際宇宙ステーションにおける微生物の現存量、種類、生理状態のモニタリングを通した微生物動態の解明を進めています。
にわかに信じがたいことですが、100℃以上の熱湯の中にも微生物が生息しています。超好熱菌と呼ばれるこの極限環境微生物は、約40億年前に遡る生命の起源にとても近い特徴を持っているとされています。超好熱菌にはそれに感染するウイルスも存在し、太古代のウイルスを垣間見ることができます。私たちは、世界各地の熱水(温泉)サンプルから、新たな超好熱古細菌ウイルスを培養法により探すウイルスハンティングを行っています。また、それらの遺伝子組換系も構築し、新たなワクチンプラットフォームの開発などの応用研究も行っています。
環境水の中に存在するDNAは環境DNAと呼ばれ、そこに棲む全ての生物に由来するDNAが含まれています。私たちは、環境DNAを用い、大型生物の分布や遺伝的多様性を推定する技術の開発を行なっています。この技術は、生物多様性評価とその保全に向けたツールとして活用されることが期待されます。開発した技術を用い、野外におけるマクロ生物の生態を解明する研究も進めています。