衛生・微生物学講座

講座紹介

新しい病原微生物や抗生物質耐性菌が、突如出現し、世間に蔓延することがあります。その一因として、環境変化に伴う病原性の進化や、グローバル化に伴う人・物の往来や渡り鳥の移動が考えられます。私たちは、このような環境中での微生物の進化や生態について、遺伝子情報をもとに研究を行っています。さらに微生物学研究で用いられてきた遺伝子解析技術を応用した環境DNA分析により、大型生物の分布や遺伝的多様性を明らかにする技術の開発も行っています。これらの研究を通じて、人間の健全な生活の保障と生物多様性の保全に貢献したいと考えています。

スタッフ

教授 谷 佳津治 准教授 見坂 武彦 助教 内井 喜美子

所属学生

  • 6回生:9名
  • 5回生:9名
  • 4回生:9名

研究詳細

私たちは主に3つのテーマについて研究を行なっています。

テーマ1. 宇宙で遭遇する微生物学的リスク評価

宇宙居住空間は、微小重力下でかつ宇宙線に曝露される閉鎖環境であるため、人間と微生物の関係が地上に比べて大きく変化する可能性があります。そこで宇宙居住における微生物リスクを低減し、人間と微生物が共生するための基盤となる知見を得るため、①国際宇宙ステーションにおける微生物の現存量、種類、生理状態のモニタリングを通した微生物動態の解明と、②微小重力環境が遺伝子伝播や細胞間コミュニケーションといった微生物間相互作用に与える影響の解明を進めています。

テーマ2. 渡り鳥とともに長距離移動する抗菌薬耐性菌の分子生態学研究

東アジア~オセアニアにいたる地域では、毎年5千万羽以上の渡り鳥が移動しており、渡り鳥とともに抗菌薬耐性菌、またその遺伝子が地球上の広い範囲を短時間で移動し、種々の生物の生態やヒトの健康に対して影響を与えている可能性があります。公衆衛生および分子生態学的な観点から危害微生物の地球規模での環境内動態を理解することを目的として研究を行なっています。

テーマ3. 環境DNAを利用した生物分布と遺伝的多様性の推定

環境水の中に存在するDNAは環境DNAと呼ばれ、そこに棲む全ての生物に由来するDNAが含まれています。私たちは、環境DNAを用い、大型生物の分布や遺伝的多様性を推定する技術の開発を行なっています。この技術は、生物多様性の評価とその保全に向けたツールとして活用されることが期待されます。

主な研究業績

2019年度

  • Uchii K, Doi H, Okahashi T, Katano I, Yamanaka H, Sakata MK & Minamoto T (2019) Comparison of inhibition resistance among PCR reagents for detection and quantification of environmental DNA. Environmental DNA 1: 359-367.

2018年度

  • Kenzaka T & Tani K (2018) Draft genome sequence of carbapenem-resistant Pseudomonas fluorescens strain BWKM6, Isolated from reces of Mareca penelope. Genome Announc 6: e00186-00118.
  • Kenzaka T & Tani K (2018) Public health implications of intestinal microbiota in migratory birds. Metagenomics for Gut Microbes London: IntechOpen 35-51.
  • Kenzaka T, Yasui M, Baba T, Nasu M & Tani K (2018) Positive selection in F-Box domain (lpp0233) encoded in Legionella pneumophila strains. Biocontrol science 23: 53-59.
  • Omotani S, Tani K, Aoe M, Esaki S, Nagai K, Hatsuda Y, Mukai J, Teramachi H & Myotoku M (2018) Bactericidal effects of deep ultraviolet light-emitting diode for solutions during intravenous infusion. International journal of medical sciences 15: 101.
  • 見坂武彦, 片岡憲司, 藤光隆司, 谷佳津治 (2018) 大阪周辺に飛来するツバメの腸内細菌の群集構造解析. YAKUGAKU ZASSHI 138: 117-122.
  • 見坂武彦, 藤光隆司, 片岡憲司, 谷佳津治 (2018) 琵琶湖周辺に飛来するヒドリガモの腸内細菌の群集構造解析. 日本防菌防黴学会誌 46: 101-104.

2017年度

  • Kenzaka T, Ishimoto Y & Tani K (2017) Draft genome sequence of multidrug-resistant Cellulosimicrobium sp. strain KWT-B, isolated from feces of Hirundo rustica. Genome Announc 5: e00641-00617.
  • Kenzaka T & Tani K (2017) Draft genome sequence of extended-spectrum beta-lactamase-producing Serratia fonticola BWK15 isolated from feces of Anas penelope. Genome Announcements 5: e01102-01117.
  • Minamoto T, Uchii K, Takahara T, Kitayoshi T, Tsuji S, Yamanaka H & Doi H (2017) Nuclear internal transcribed spacer-1 as a sensitive genetic marker for environmental DNA studies in common carp Cyprinus carpio. Molecular Ecology Resources 17: 324-333.
  • Omotani S, Tani K, Nagai K, Hatsuda Y, Mukai J & Myotoku M (2017) Water soluble vitamins enhance the growth of microorganisms in peripheral parenteral nutrition solutions. International Journal of Medical Sciences 14: 1213.
  • Uchii K, Doi H, Yamanaka H & Minamoto T (2017) Distinct seasonal migration patterns of Japanese native and non-native genotypes of common carp estimated by environmental DNA. Ecology and Evolution 7: 8515-8522.