文学部
本学では、学芸員資格を取得するための必修科目「博物館実習」の一環として、和泉市教育委員会と合同調査に参加しています。毎年和泉市に所在する社寺にて行われる仏像調査で、今年は1ヶ寺で2日間にわたる調査を行いました。
まず現場で和泉市の職員の方や本学の元教員である吉原先生と合流し、お堂の中でこれから調査する仏さまを前に正座し、合掌してご挨拶します。続いて、仏像の安置状況を予め確認し、動線を確保しながらお堂の中に写真撮影の場所と調書を作成するための場所をセッティングします。
いよいよ仏像を須弥壇から降ろし、調査場所へ仮置きするところから、実際の仏像に触れることになります。持ち方に注意しながら運び、薄葉(うすよう)という紙の上に仮置きします。その後、やわらかい刷毛や筆を用いて仏像のお身ぬぐいを行います。この時、各像や付属品の状態を確認し、部材の欠失や接続が不安定な箇所を見つけておきます。簡易な修復は市内在住の仏師の方がその場で処置してくださり、間近で様子を見るのは新鮮でした。
お身ぬぐいを終えた仏像から、順次調査や写真撮影を行います。仏像がたくさんあるので混乱しないよう、調書と写真に通し番号をつけて効率よく行います。
今回の調査では、2体の仏像について興味深い情報が得られました。台座の下に置かれていた台輪(だいわ)の内側に寄進銘(きしんめい)があり、名乗りから現在の和泉市内の出身で江戸在住と思われる男性が、江戸時代の正徳(しょうとく)3年(1713)に仏像を制作し奉納したことが記されていました。仏像の台座には男女一対の戒名があり、寄進者の両親か先祖の戒名ではないかと考えられます。このように地縁や血縁によって、遠隔地の人物が仏像を作らせることがあるのですね。

授業では、教室の中でレプリカを用いて仏像の計測等を学んでいるのですが、現場で本物の仏像の法量を測り、扱い方を教わりながら調書の記入や撮影補助を行う経験は、なかなかできることではありません。参加した学生は「楽しかった」そうです。
お世話になりました和泉市教育委員会の皆さま、調査を受け入れてくださったお寺様に、心より御礼申し上げます。(文責:T)