センター長メッセージ

英語が遠い何かをあなたに近づけてくれる

教授 村尾 敏彦

外国語は、途方もなく遠い何かを脇腹に触れるまでに近づけてくれることがあるようです。私の場合は英語でした。インターナショナル・スクールの美術の先生をしている英国人と、ロンドンのスーパーマーケットでわたしは知り合いになりました。英国社会の暮らし方は日本とはずいぶん違いますが、彼が母親や子どもの将来を心配して語る言葉の芯に流れる思いは、わたしの腹の底まで波のように押し寄せてきました。

同じくロンドンで知り合ったユダヤ系英国人女性は演劇学校で教えていたのですが、彼女のお父さんはナチス・ドイツのユダヤ人迫害から逃れて英国にやってきたのでした。移民の第一世代は英語が不自由なので生活費をえるのに苦労したといった話が、穏やかな笑顔から静かに広がり、わたしは過酷なヨーロッパ現代史にへそにまで浸かったように感じました。

アイルランド共和国のドネガル地方のある村のB&Bで、ある男性と知り合いました。彼は北アイルランド(英国)で家族と暮らしていたのですが、失われた祖先の言葉アイルランド語を学ぶために、この村を訪れたのでした。わたしにとって北アイルランド問題は本の中だけで知っている遠い話でしたが、彼がアイルランド語を学び始めた動機を聞いていると、不意に冷たい剃刀が脇腹に触れたように感じたのです。

学生のみなさんも、遠い世界と身近に出会ってみませんか。そのための通路として英語を学ぶためのサポートを用意して、英語教育センターはみなさんを待っています。

経歴 京都大学文学部卒業、大阪市立大学大学院文学研究科後期博士課程満期退学。文学修士
専攻分野 演劇学
担当科目 身体表現と社会、ワークショップ論 ほか
E-mail muraot@osaka-ohtani.ac.jp