人間社会学部からのお知らせ

【人間社会学科】<岡島ゼミ>オンラインゼミで新型コロナウイルス感染症に関する教材を試す

お知らせ

新型コロナウイルス感染症拡大と大学教育

今回の新型コロナウイルス感染症の拡大では、この感染症への感染はもとより、ステイホーム等の行動変容、経済状況の悪化、差別やヘイトスピーチなど、恐れや悲しみといった感情を抱きやすくなっています。しかし、あるいは、だからこそ、私たちはこの感染症というリスクを学びの対象とし、これからの、個々の「人間」としての生き方、「社会」のあり方をどうするのか、模索していくことが求められています。

また、新型コロナウイルス感染症を予防するため、通常教室をつかった対面授業ができず、学修効果の高いアクティブ・ラーニングを行うことが困難だとも言われています。一方、現在、労働の現場は急速なICT化を経験しており、ウェブ上で議論し、グループとしての合意を見つけるといったことは「ポスト・コロナ時代のニュー・ノーマル」(新型コロナウイルス感染症収束後の新常態)とも言われています。その意味で、社会に出て求められる能力も変化しており、そのため、多くの人にとって社会に出る直前に位置づけられる大学教育においても、「教育の質が下がっても仕方がない」ではなく、そのような変化に応じた、学び方の変化も求められています。

岡島ゼミⅠでの取組の内容

こうした背景を踏まえ、人間社会学科の岡島ゼミⅠ(3回生)では、開発教育協会(DEAR)が作成した教材『新型コロナウイルス感染症とわたしたち』をもちいながら、オンラインゼミを行いました。

この教材をつかった学習は、①まずこの感染症について、ワークシート(「悲しい」「励まされる」「怒っている」といったことばが書かれている)にもとづき、互いの「気持ち」とその理由を共有し合うことから開始します。岡島ゼミでは、Zoomにあるブレークアウトセッション機能をつかって、小グループに分かれ、話し合ったことを、ゼミ全体に向けて発表するという形をとりました。その後、②多様な団体が多様な観点からこの感染症について発表したコメントを集めた「新型コロナウイルス感染症をめぐる様々な意見・情報」を読み、感想を共有する、③「これからの世の中はどう変わる?どう変えたい?」というシートを用いて、「衣・食・住 暮らし方」「教育・学校」「医療・福祉」「仕事・雇用」等、さまざまな観点から、社会の今後と自分とのかかわりを考えるということを行いました。(時間的制約から「なにが起こった?どう感じた?」というワークは省略しました)

以下、ゼミ生たちが、上述のようなワークを経て、自らの新型コロナウイルス観がどう変わったのか、書いてくれたものの一部を紹介します。自分自身の「怖い」「不安だ」といった感情を大切にしつつ、同時に、より広く多角的な観点から、すなわち、個人的な観点のみならず社会的な観点、短期的な観点だけではなくより中長期的な観点で、この感染症を見始めるようになったのではないかと思います。

今後の取組

一方、時間的な制約から、教員によるふりかえり指導が不十分であったとの反省も残りました。今回の感染症拡大であらためて明らかになったことは、感染拡大の下地に人やモノの越境的移動が加速化するグローバル化というものがあること、地域コミュニティにおけるわたしたちの暮らしとグローバル社会とのあいだのつながりが如何に密接なものであるのかということ、そのため、海外での感染拡大がとまらない限り日本社会の安定もありえないということです。しかし、学生からの感想を見ていると、まだまだ海外の動きが「自分事」にならず「他人事」のままにとどまっているようにも思われます。

もともと、2020年度岡島ゼミⅠのテーマは「SDGs(持続可能な開発目標)の指標をもちいて大学近隣自治体の現状を分析する」というものですが、そのテーマにもどる前に、この感染症が「人間」や「社会」にもたらすインパクトとSDGsとの関連を見ることで、もう少しSDGsとは何かについての理解を深めてみたいと思います。

学生からの感想(抜粋)

「コロナに対して感染症の被害だけでなく経済や環境、グローバル化からの新しい視点で考えるヒントが多くあり、これから起こる社会変化を考え、自分に出来ることや対応するための必要な行動を考える機会にもなった」

「コロナの影響で社会的弱者がより一層苦しい思いをする世の中になると思った。苦しい思いをする人を助けるためにボランティア活動が今まで以上に大切になり、これが自分にもできることだと思う」
「社会的、経済的に不安定な状況の人たちや家庭内で暴力を受ける人が増加していることから社会制度の弱さと同時に人間関係の弱さも感じた」

 (※Zoomのスナップショットにある学生の氏名が見えないように加工しています)