教員コラム

犯罪心理学のウソホント!?

人間社会学部 人間社会学科 心理コース 講師 緒方康介

「タバコを吸うと肺がんになる」という話を聞いたことがありますか?因果関係は証明されてないのに,まことしやかに語られるのはなぜでしょう?理屈はこうです。世界中の人口を仮に100人だとします。この100人中,肺がんを患う人が20人いたとします(20%)。世界中でタバコを吸う人は30人,吸わない人は70人です。タバコを吸う30人のうち15人が肺がんになる一方で(50%),タバコを吸わない70人のうち肺がんになるのは5人でした(7%)。この結果を知っていれば,因果関係は不明でも「タバコを吸うと肺がんになるおそれが高い」と言えますよね。

ところで,一度に複数の人が殺される大量殺人の犯人に精神障害が認められると,さまざまなメディアを通して「精神障害者≒犯罪者」というまことしやかなイメージが流布します。しかし,「タバコと肺がん」の例と同様に考えるならば,精神障害のある人が精神障害のない人よりも多くの犯罪に手を染めている証拠を示さなければならないはずです。

これを『警察白書』,『患者調査』,『国勢調査』といった公的統計に基づいて分析したのが右の図です。ひと目見てわかる通り,精神障害のある人よりも,精神障害のない人(一般人口)で罪を犯す確率の高いことが読み取れます。そもそも犯罪者となる人が少ないため,割合は低いのですが,単純に考えて2倍以上です。

公的統計をさらに分析すると,別の角度からも「精神障害者≠犯罪者」であることを導けます。

左の図は,そもそも一般人口中に精神障害のある人がどのくらいいるのか,そして,罪を犯して捕まった人のなかには何%いるのかを比較したものです。過去15年間の統計から,一般人口の2~3%になる精神障害者が,犯罪者のなかには多くて1.5%しか出現しないことが読み取れます。

この統計は,一部の罪種(殺人,放火)に限り,精神障害者等の割合が20%弱となることに留意しなければなりません。それでも,80%強は精神障害のない人が犯した罪であることを示しており,いずれにせよ,精神障害のある人を犯罪者(予備軍)だと捉えるようなイメージは間違っていることがわかったのではないでしょうか?