教員コラム

将来の宇宙居住へ向けて

薬学部 衛生・微生物学講座 助教 内井喜美子

宇宙と聞くと何が思い浮かびますか?ロケット、月面着陸、ブラックホール、ビッグバン、、、そのスケールは壮大です。そのなかで私たちが調べているのは目に見えない小さな生き物「微生物」です。

地上400 kmの宇宙空間を飛行する国際宇宙ステーション(ISS)が私たちの研究の舞台です。ISSは宇宙において人が居住できる唯一の空間であり、宇宙飛行士により宇宙環境を利用した様々な実験が行われています。ISSでなぜ微生物を調べるのでしょうか?目には見えない微生物ですが、実は環境中の至る所に存在しており、我々の体内にも膨大な数が棲み着いています。つまり、人間がいる所には必ず微生物がおり、ISSの中で人間と微生物は共に生活しているのです。微生物は我々が健康を維持する上で様々な役割を果たしており、なくてはならないものですが、時に病原性を発揮し、人間にとって有害となる場合があります。宇宙環境では一部の微生物の病原性が増強されるという可能性も示唆されているため、ISSという宇宙居住空間での安全な生活を実現するためには、そこで微生物がどのような振る舞いをするのか、そして人間とどのように関わり合うのかを明らかにすることが重要なのです。

これまで私たちの研究室が他大学やJAXAと共同で進めてきた研究から、ISSの環境中に存在する微生物の数は地上に比べて非常に少ないこと、そしてそのほとんどが人由来であることが分かっています。これは、ISSにおける微生物制御が上手く機能していることを示す一方、人間から環境中へ移行した微生物がリスクとなりうることを表しています。しかし、ISSのなかで微生物が実際にどのような活性を持ち、具体的にどのような健康リスクに繋がるのかについてはまだまだ不明なことだらけです。今後実現されるであろう本格的な宇宙居住(例えば、月面居住)における微生物リスク管理に役立つ微生物学的知見を蓄積するためにも、これらの不明点について明らかにすべく、日々、研究を進めています。