2019/11/13
歴史文化学科では、毎年、歴史や文化をテーマとする公開講座を開催しています。本年度は、10月26日(土)に、志学台キャンパスで「「空間」を読み解く」と題した講座を開催しました。
古来、「空間」や「場」をめぐるイメージは、考古資料や美術品において重要な役割を担ってきました。では、「空間」や「場」は具体的にはどのように表わされ、どのように意味づけられてきたのでしょうか。本講座では、古墳群・霊鷲山・彦火々出見尊絵巻を例に、考古学と美術史学の立場から「空間」と「場」の問題が検討されました。
まず、考古学を専門とする犬木努教授が「古墳群の空間分析―古墳の設計と配置の論理―」と題した講演を行いました。
犬木教授は、宮崎県の西都原古墳群に焦点を当て、一見、無秩序に配置されているように思われる多数の古墳が一定の基準をもって配置されていることを鮮やかに示しました。埴輪を手がかりにすると、この古墳群が二つの系譜に分けられるという指摘もとても興味深いものでした。
つぎに、仏教美術史を専門とする田中健一氏(文化庁文化財調査官)が「霊鷲山を表象する空間」について講演しました。霊鷲山は、釈迦が多くの時間を過ごしたインドの聖地です。田中氏は、多数の史料と美術作品を紹介しつつ、霊鷲山という重要な場の持つ聖性がいかに移植され、対置されたかという問題を論じました。
ところで、田中氏は、一昨年度まで本学科の専任教員として教鞭を執っていました。教職員一同が再会を喜んだのはもちろんですが、在学生・卒業生にとっても、久しぶりに田中氏のお話をうかがう得難い機会となりました。
最後に、日本美術史を専門とする苫名悠講師が「《彦火々出見尊絵巻》における空間の見立てをめぐって」と題した講演を行いました。苫名講師は、原本は現存しないものの、美術史的に重要であるとみなされる本作品をめぐる研究状況を丁寧に紹介したうえで、第一巻に表わされた州浜の空間が「住吉」に見立てられている可能性を探究しました。
講演後は、全体質疑・討論を行いました。今井澄子教授の司会のもと、各講演者が会場から寄せられた質問に回答し、補足説明を行いました。
本講座の受講者からは、「空間に視点をおいて、異なる専門の先生方のお話がうかがえて面白かったです。」「今まであまり考えたことのない視点でしたので、非常に新鮮なことばかりでした。内容も聞きごたえ十分でした。」「資料が充実していて分かりやすかったです。」などの感想をいただきました。休憩をはさみつつ4時間にわたって行われた長い講座でしたが、集中力を切らさない皆様の熱心な受講態度に頭が下がる思いがいたしました。ご来場くださり誠にありがとうございました。
最後に、本講座にご協力くださった講師の先生方と学生スタッフの皆さんに、心からの感謝を申し上げます。
(文責:I)