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人間社会学科発「ある公認心理師からのミニ情報」1

2019/08/08

 今年は公認心理師有資格者が活動しはじめた年です。それにあわせてタイトルも「ある臨床心理士からのミニ情報」から「ある公認心理師からのミニ情報」にリニューアルしたいと思います。

 さて、最近、「エビデンスがなければ許可が下りない」などの言い回しが見聞されます。「ある臨床心理士からのミニ情報」第10回の情報で、心理学とは「実証主義的な行動科学」であると示しました。この実証主義的という部分が、このエビデンスを提出することにつながってきます。単純な言い方をすれば「証拠を出す」ということです。ただし、証拠といっても「私は見ました」「私は経験しました」だけでは、エビデンスを示したとまではいえません。個人的な体験談は普遍性のあるものもありますし、単なる偶然の場合もありますから。
 心理学では「やはり男性より女性の方が性格的におとなしいよね」のような説は、エビデンスが提出されるまでは「仮説」とされます。本当にそうなのか、調査や観察などの方法を用いて、資料(データ)を集めて、結果を分析します(要は、証拠をみつけます)。このような検証作業をする過程で統計学が必要な場面が多くなります。心理学を神秘的なものと先入観をもっている人にとっては、意外かもしれませんが、これが心理学的方法なのです。ただし、公認心理師や臨床心理士が働く領域では、すべての問題が実証されている相談内容ばかりではありませんから、場合によっては、個人の経験に基づく直観が必要になります。このようなことをいうと、「私は統計なんて地味なことをしたくないから、実践的な心理学をします」という人に出会うこともありますが、正直なところ、こういう人は心理職には向いていません。特に国家資格である公認心理師の場合、これまで以上にエビデンスが求められる立場になるかもしれません。
 自分だけの世界で自分に興味のある勉強だけをして完結しているならば、何ら問題はありません。ただし、相談に来られる人にとって、担当者の個人的な嗜好はそれほど重要ではありません。相談者の問題解決にどれほど役に立つかが重要なのです。その時、地味であろうが何であろうが、より確実性のある方法を相手側に提供できるか否かは大切です。医学の世界では「ヤブ医者」と揶揄されることが、心理職の業界でもあるといえます。あくまで個人の直観とは、その時点で検証されていない問題を扱わないといけない時に使用します。日頃からエビデンスのある情報をしっかり集めることが、「ヤブ心理職」にならないためには重要です。

(人間社会学科教員:小西 宏幸)

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