2016/08/06
第14回:(臨床)心理学と精神医学ってどう違うの?
「ストレス対策」などのお話をすると、時々、「先生は心理の専門家みたいですが、精神科とか神経科のお医者様ですか?」と声をかけられることがあります。結論から言えば、心理学を基本にして臨床心理士を取得した者は、医師(ここでは、精神科医や心療内科医)ではありません。ただし、医師にも臨床心理士の資格を有しておられる方はいらっしゃいます。私自身は、大学も大学院も心理学を専攻して、臨床心理士を取得しましたので(要は、医学部出身者ではありません)、医師ではありません。
少なくとも、日本では「最近、眠れません」「最近、不安で仕方ありません」などの訴えがあった際、医師でない臨床心理士が薬の処方をしてしまうと、犯罪になります。要は、精神的、心理的な相談に関して、薬を使わない方法を用いて対処します。また、「うつ病」や「不安障害」などの診断名をつけるのも医師の仕事です。
うつ病でも不安障害でも、身体の不調と同様、お薬は即効性がある場合もあります。もちろん、薬があわなくて、心理カウンセリング(厳密には、この場合、「心理療法」というべきなのですが、これを書き出しますと長くなります)を希望される方もいらっしゃいます。すべてではありませんが、何種類かの薬にも効果が認められない場合、心理療法をすすめられる患者さんもおられます。その場合、主治医が「心理療法(精神科医が行うと、精神療法と名前が変わることもあります)」の使い手ならば、薬物療法でない方法に、治療方針の変更となるかもしれません。また、「薬が効果的でないなら、臨床心理士に心理学的な方法を担当してもらおう」と依頼される場合もあります。
最近では、専門職のなかで「正常」「異常」という表現は、ほとんど使われませんが、一昔前ですと、人間心理を考える際、より異常心理の切り口からアプローチする精神医学と、より正常心理の切り口からアプローチする心理学という比較をされたことがあります。あくまで極端な言い方ですが「人間だれしも異常な部分をもっている」から考えるのか(精神医学)、「異常に見える兆候とは、ある特徴が極端に強いか弱いか」から考えるのか(心理学)と表現することも可能かもしれません。
(人間社会学科教員:小西 宏幸)