2014/07/24
歴史文化学科の美術史学領域では、毎年仏像調査を行っています。今年は、三日間で二ヶ寺の仏像、仏画、工芸などを網羅的に調査しました。すべての文化財を調査するという意味で、こうした調査を「悉皆調査」といっています。学生は、「美術史学実習」や「博物館実習」などで、仏像の扱い方や仏像の観察方法などを繰り返し練習した後に、この調査に参加します。
また、この調査は和泉市教育委員会との合同調査です。調査結果はお寺さんの記録になると同時に、現在進行中の和泉市史編さんのための重要な資料にもなります。
仏像調査の一日をご紹介しましょう。
9時半ごろ、お寺さんの最寄り駅に集合、和泉市の市史編さん担当の先生方に挨拶と自己紹介をし、お寺までは徒歩で移動します。
途中の神社で、調査の無事を祈りました。
お寺に到着。ご住職とご本尊にご挨拶し、調査を開始します。
調査では、仏像を壇からおろして簡単なお身拭いしたのち、サイズ、形状、制作技法、保存状態の順に記録をとっていきます。
文字記録が書かれている場合もあり、これも貴重な情報です。多くの場合、くずし字で書かれていますが、一字一字現場で採録します。
次に写真撮影です。正面、側面、背面、それに顔のアップと撮影していきます。さらに、頭からの写真や像の底も撮影します。像底の観察と撮影は、仏像がどのような技法でつくられたのかを知るための重要な手がかりになります。
一通りの記録がとれれば、制作された時代を考えます。
「江戸時代かな、それとも室町時代かな」。
と、参加した学生も、参考資料を片手に仏像の特徴をみつけようと頑張っていました。
時には、お寺に残された古記録から、新事実が発見される場合もあります。
今回の調査では、仏像だけでなく仏画も多く調査できました。湿気などによって痛んでいる場合もあり、慎重に慎重に扱わなければなりません。
調査を終える頃には、すでに時計も五時をまわっていました。
ふだんはお寺で遠くから拝む仏像、あるいは博物館でガラスケース越しに眺めるだけの仏像。そうした仏像に直接ふれ、間近で観察する経験は、学生にとって忘れがたいものです。
今年は、お寺さまからも、和泉市教育委員会からも、学生の参加態度が非常に真摯とのおほめの言葉を頂きました。