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人間社会学科発「ある公認心理師からのミニ情報」6

2021/07/14

 第6回:未来という時を気にする動物が人間?

 いや~、コロナ事情で何回も緊急事態宣言が発令されると、「またか」という辟易する気持ちが出てきたり、「いったい、こんなことがいつまで続くのか?」という考えが頭に浮かんだりするかもしれません。今回は人間の特徴の1つである「未来を予測する」ということを少し紹介したいと思います。

 一説によると、動物の中で未来を意識するのは人間くらいだそうです。もちろん、これには反対の意見も存在します。野生の生き物は、その時その時を必死に生きているので、あまり1か月後にはこうしてとかはないようです。それに対して、私たち人間は予定(スケジュール)を組み、この日までに準備しないと、のような焦りから不安を感じることも珍しくありません。ちなみに、PTSDという言葉をきかれたことはあるでしょうか?この言葉は「過去」における衝撃的な出来事、そして、それが記憶に強烈に刻み込まれて発症する精神医学的な診断名です。一般的には野生動物はPTSDの状態になることは想定されていません。人間特有の現象と考えることができます。それは「過去」の出来事がきっかけですが、「また、同じことが起こったらどうしよう」と未来への不安も生じることによって、そのPTSD状態が続くわけです。野生動物には何度も命の危険を感じる場面があるわけですが、人間のようなPTSD症状が形成されることはあまりないようです。未来への不安を感じて、何もできなくなると、食べ物などが確保できないので、それこそ命の危険があります。

 人間の脳は高度に発達しすぎているため、未来のことをあれこれ考え過ぎる、その結果、場合によっては、不安を感じて、行動が極端に消極的になります。PTSDという言葉を使用しなくても、日常でも似たような現象があります。たとえば、ある日時に友達と待ち合わせをしていたとしましょう。約束の時間になっても、その友達が待ち合わせ場所に現れない。この時、「どうしたんだろう?」「私が時間、間違えたかな?」「私が場所を間違えたかな?」といろいろ考えて不安になることもあるかもしれません。この時、友達から「ごめん、電車が遅れていて、もう30分待ってくれる?」のような連絡があれば、未来への見通しがありますので、それほど心配したり、イライラしたり、怒りを感じなくて済むのではないでしょうか?

 コロナの現状も「あと1か月後にはおさまる」のような確実な見通しがあれば、我慢しやすいのですが、何度も「今はまだ駄目です」「今が我慢のしどころです」のような「未来」が予測できない、予測しても簡単にそれがひっくり返される状況ですと、人間にとっては大きな心理的負担といえます。もしかして、未来をあまり考えすぎず、今を、この時を大切に過ごすという意識が重要なことかもしれません。 

(人間社会学科教員:小西 宏幸)

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