2016/06/29
第13回:臨床心理学とカウンセリング
第1回目にカウンセリングは必ずしも心理学をベースにしたものではないことをお伝えしました。時折、カウンセリングに「癒し」や「心の病の治療」などのイメージをもたれている方がいらっしゃいます。しかし、もともとカウンセリングは医学のような治療的な性質はなく、適性検査や進路指導の分野からスタートしています。この意味では、知能検査や性格検査との関連性も深い業務といえます。ある個人の特徴を把握する際の1つの手段に心理検査(知能検査など)があるわけです。心理検査だけではなく、さまざまな情報を利用して、どういう進路が向いているかの相談業務がカウンセリングの出発点といえます。つまり、どちらかといえば、学校でいえば「進学指導・進路指導」、会社でいえば「人事部」の仕事に必要な業務といえます。場合によっては、カウンセリングは「教育学の分野であり、心理学を基礎としていない」との定義があるぐらいです。
ところが、カウンセリングにもいろいろな方法があって、指導的、指示的な方法に対して、非指示的な方法も提案されるようになりました。その後、モデルの修正が何度かなされたのですが、この方法がカウンセリングの代表格となりました。結果的に指導的な対応が「カウンセリング・マインド」ではないと誤解されることもあります。時々、学校教師が「カウンセラーなんて生徒を甘やかせているだけだ」と批判される場合、非指示なカウンセリング場面だけを認識されていることが多いといえます。元祖カウンセリングの実践家ともいえる教師的立場の方が「カウンセラー」を批判する背景には、カウンセリングの方法論が1つではないと考えることができます。
日本での臨床心理士養成は、訓練期間も長いとは言えず、大学学部時代に心理学を専攻していない方もそこから最短3年で臨床心理士の資格をとれます。この意味では、臨床心理学の専門家である臨床心理士を養成しているというよりもカウンセリングに特化した「カウンセラー」を養成しているとの考え方もあります。
(人間社会学科教員:小西 宏幸)