2016/05/25
第12回:人づきあいは大変だ:人間関係の煩わしさか孤独の寂しさか?
思春期や青年期を対象とした相談業務をしていると、他者との関わり(要は、人づきあいですね)がテーマになると、お決まり?のパターンがいくつかあります。今回はそのうちの1つを紹介します。「一人は嫌だ、友達がほしい」これは孤独による寂しさがクローズアップされています。ただ、この人が希望通り、友達ができると違う悩みが発生する場合もあります。「友達関係を維持するために、行きたくない場所にもいかなければならないし、お金もかかる、アルバイトをしたら、今度は時間が無くなって、休日はゆっくりしたいと思っても誘われると外出しなければならない。断ると友達関係がこわれそうで不安」これは人間関係の煩わしさが問題の焦点となっています。
対人関係のスキル向上のために、SST(社会的技能訓練)などのプログラムもありますが、前回の車の運転を考えると、安全運転の講習などを体験すると、事故の確率は低くなるでしょうが、危険率をゼロにはできない論理は誰もが納得できると思います。つまり、人間関係もゼロ状態ですと、関わることによるトラブルはほとんどないといえます(集団による無視などはゼロ状態では思われるかもしれませんが、心理学的にいえば、その人に対して無視をしつづけるという関わり行動が成立することになります)。しかし、友人であれ恋人関係であれ家族関係であれ、関わりがあれば、良好な関係が成立する可能性とともに、対立や葛藤などの厄介ごとの危険性も同時にはらむことになります。「人間関係は絶対ほしいが、対人トラブルはゼロにしたい」と考えるのは自由ですが、現実には不可能といえます。つまり、前回のキーワード「人生において、何の価値観を優先順位とするか」が重要になってきます。何かを選択することは同時に何かを捨てることを意味します。何を優先するかは、その人によって異なるのです。心理カウンセラーは、このような取捨選択のガイド役といえなくもありません。
(人間社会学科教員:小西 宏幸)