大阪大谷キャンパスブログ OSAKA OHTANI CAMPUS BLOG

SEARCH
NEW ENTRY
CATEGORY
CARENDER
ARCHIVE

人間社会学科発 「ある臨床心理士からのミニ情報」17

2017/08/23

第17回:過去・現在・未来:何でもほどほどがいい

 人間は、いや、あらゆる存在は(少しオーバーですね)、過去・現在・未来という時間の流れのなかで生きています。そして、人生で推奨される教訓に「反省をして、次回につなげよう」「行き当たりばったりでなく、将来のために計画をたてよう」などがあります。前者は過去の分析、後者は未来のシミュレーションといえるかもしれません。
 たしかに、データ主義という観点では過去の分析、将来への備えという観点では、未来のシミュレーションは重要な作業です。ただし、何でも程度問題ともいえます。「反省」の作業をしすぎると、自己嫌悪を生じさせてしまう場合があります。この自己嫌悪がひどくなった1つの病態が「うつ病」です。うつ病にはいろいろな要因が認められていますが、「過去の出来事について反芻が多すぎると、抑うつ感情を引き起こす可能性が高くなる」との説もあります。要は、反省しすぎると、精神衛生的に良くないということです。心理療法の1つの方法に「反省除去」なるものもあるぐらいです。
 次に、未来のシミュレーションですが、これもやりすぎると、不安が高まるだけです。つまり、「これも起きるかもしれない。じゃあ、何かを準備しないと」「あれも起きるかもしれない。じゃあ、対策を考えないと」と、これをやりだすと、いつまでも、本来の目的であった実行が先延ばしになるだけですよね。未来への不安が強すぎる方のなかには「全般性不安障害」や「強迫性障害」に罹患してしまう事例も少なくありません。「まだ、ばい菌がついているかもしれない、そうしたら、感染症になる危険性がある」と、手洗い行為を永遠と続けてしまう状態は「強迫性障害」の1つともいえます。
 では、過去にも未来にも縛られず、現在だけに注意を向けて生きていくことがいいのか?と問われると、これも1つ間違えると「今さえ、よければそれでいい」「どうせ、明日のことなんてわからない」など、周囲の迷惑を一切考えないとか、無責任に走りすぎることもないとはいえませんから、何でもほどほどがいいのでしょうね。

(人間社会学科教員:小西 宏幸)

Copyright © Osaka Ohtani University. All Rights Reserved.