建学の精神

「報恩感謝」

朝に礼拝 夕に感謝

本学の母胎大谷学園は、明治42年、大阪の難波別院境内に設立された大谷裁縫女学校に端を発し、2009年には創立百周年を迎えました。創立者左藤了秀は、真宗大谷派の僧で、日露戦争後の人心の荒廃に心を痛め、仏教界の刷新に情熱を傾けた人です。仏教を人々の心の糧として定着させるためには、学校教育を通して宗教心を育成すべきだと考え、一宗一派にこだわらない自由な立場で宗教的情操教育を行おうと、本学園を創設しました。

校祖の理想を受け継いで、「大乗仏教の精神」を建学の精神の根幹に定めました。その立場は、2006年に男女共学に移行し大学名を改称した後もかわることなく守られています。

「大乗仏教の精神」には、極めて広い意味内容が含まれていますが、本学では開学以来それを「報恩感謝」という言葉で理解しています。

釈尊によって提唱された仏教は、あらゆる「いのち」が、その個性のままに絶対の尊厳をもち、しかも互いに支え合いながら存在することを説く宗教です。すべての生きとし生けるものが、それぞれの個性を最大限に発揮し、最高の輝きを得られるよう、共に助けあい励ましあって成長してゆけるような社会の実現を目指しています。これこそが大乗仏教運動の目標であり、真宗の宗祖親鸞聖人の教えもこの精神に依拠するものと言えます。自己が無数の「いのち」に支えられていることを自覚し、その恩をたずね、感謝の心を捧げつつ生きてゆこう、というのが「報恩感謝」の心です。

「報恩感謝」の心を芽生えさせるためには、「いのち」を見る目を持つことが肝要でしょう。昨今の社会情勢を見ますと、「いのち」を見る目の欠如がさまざまな問題の根元をなしているように思われます。我々は普通、自己を中心にして他者の価値を判断しています。自分にとって役に立つか否かの判断基準に基づいて物の価値を定めています。これは「道具」を見る目と同じです。道具を見るのと同じ判断基準で人を見てはいけません。人を見るときは、一つ一つの「いのち」の尊さに目を向けなければならないのです。

本学では、「大乗仏教の精神」に基づき、互いを「いのち」を尊び、感謝の心で接し合うことができるような人間関係を築くことによって、輝かしい個性の集う理想の学園を作り、社会に貢献してゆくことを目指しています。